受講生
株式会社蒔いて吉田彩子
株式会社蒔いてが手掛ける心と体を冷えとストレスから守るアルパカ素材のニットウェア事業について教えてください。
蒔いては、保温性や放湿性機能の高い「アルパカ」素材を活用した、衣服の企画製造販売を行っています。自社ブランドのMAITEでは、特に冷えに悩む働く女性に向けた、シンプルで職場でも着やすいニットウェアを提供しています。体の冷えに悩む女性は驚くほど多い一方で、素材についての知識はあまり知られていません。素材を見直すきっかけと共に、触感を通して心地よさと癒しを届けたいと考えています。
商品の製造は主に、原料の産地ペルーで行い、一部の製品は日本で製造しています。アルパカ繊維は、世界の80%以上が南米原産です。その多くを占めるペルーでは、アルパカ素材を用いたテキスタイルは5000年以上前から続く伝統産業です。今でも約500万人の先住民が、富士山をはるかに越える標高のアンデス高地でアルパカを育てています。弊社では、先住民から公正な価格で毛を買い取り、飼育や毛刈りの指導も行っている紡績会社の糸を用いて、首都リマの貧困地域に住む女性や職人、日本の工場の方達と、透明性のあるものづくりに取り組んでいます。
デザインは、実際のお客様へのヒアリングや、モニタリングを何度も重ねて行っています。「上質な素材へのこだわり」「シンプルで品のあるデザイン」「エシカルな生産背景」を兼ね備えていることが、差別化要因になっています。
起業のきっかけを教えてください。
起業のきっかけは、学生時代から関心のあった「国際協力」と、前職での経験です。大学時代に、ペルーの貧困地域で手編みのマフラーを作り、女性の収入の機会をつくるプロジェクトを支援していたことがあり、「ものづくりの可能性」と「女性のエンパワーメント」への関心を強くもちました。
製造業の実態を学ぼうと、卒業後はアパレルの生産管理の仕事に就きました。グローバルな環境で、海外の工場では多くの雇用を生み出し、高品質で手頃な価格の製品を世に送り出す一方で、廃棄の多さと、画一的な製品が増えることへの違和感が年々自分の中で高まっていきました。
「愛着をもって長く使ってもらえるようなものを生み出したい」という想いから、縁のあったペルーとアルパカ素材に着目し、起業を考え始めました。その頃、知人が突然帰らぬ人となってしまったこともあり、「いつかやりたい」と思っているなら「今やろう」と決断し、一歩踏み出しました。
今後の展望を教えてください。
近年女性の活躍や社会進出が声高に唱えられていますが、その環境には多くのプレッシャーやストレスが存在します。まずは、まだまだ知られていないアルパカ素材について、特に冷えや、敏感肌で悩んでいる働く女性にもっと知っていただき、おしゃれを通して忙しい日常でも自分を大切にして心身をケアする時間のお手伝いをしたいと考えています。
実は日本にとって、アフリカよりも遠い位置にある南米。日本では情報も限られていて、あまり知る機会がありません。今年から、港区の民間が運営するコミュニティ施設で、実際に商品を手に取っていただけるショップスペースやイベント、ニットカフェを定期的に開いていきます。
お客様や地域の人と直接つながる場を設け、異文化やものづくりの面白さ、衣服の廃棄問題についても知っていただける機会を増やしていきたいと思っています。