マインドチェンジストーリー
「車いすの人たちがあきらめない世界をつくりたい」と、多岐にわたる活動を展開する織田友理子さん。自ら開発を手がけたバリアフリーマップアプリは、米グーグル社主催の社会貢献アイデアコンテストでグランプリを受賞した。活動の継続に向けて利益を引き出す方法も模索し、心のバリアフリーが進んだ社会の実現に向けて歩みを進める。
デンマークで学んだ「ポジティブ」な障がい者活動のあり方
22歳の時に筋肉が萎縮する進行性の筋疾患「遠位型ミオパチー」と診断を受け、26歳から車椅子生活を送っています。それまでは健常者として生きてきたので、病気だと診断された後も障がい者としての自覚はあまりありませんでしたね。障がいについてより詳しく学んだのは、福祉先進国のデンマークに留学した30歳のころからでした。同情で支援をうけるのではなく、いかに健常者を巻き込みながら「面白そう」と思ってもらえる活動を展開できるか。デンマークで得た多くの学びは私の次のステップにもつながり、2014年にはバリアフリー情報をインターネットで動画発信する「車椅子ウォーカー」を立ち上げました。車椅子ウォーカーは私からの一方的な情報発信で、それでは課題解決のインパクトが弱いと感じ、双方向で状況共有をできるプラットフォームとして、みんなでつくるバリアフリーマップアプリ「WheeLog!」の構想に行きつきました。今後も双方向で情報を共有できるプラットフォームを広げていきたいと思います。
事業を通じて収益を上げる大切さ
APT
Womenに参加した当初は、同期の方の意識高さとステージの違いを感じ戸惑いを隠せなかったというのが素直な感想です。当時は車椅子で走行した道をみんなでシェアするアプリ「ウィーログ」を展開していたのですが、どのように収益をあげるかよりも、真面目に誠実に作ることばかりを考えていました。しかしAPT
Women のメンターの方々や周りの仲間と真剣に話すうちに、事業をきちんと継続させるためにも、スポンサー支援をはじめ資金を得て事業を運営する方法について考え始めることができたのです。APT Women
を通じてビジネス的なマインドをもてた結果、先日観光庁が発表したパラリンピック関連の事業を落札できました。もしAPT Women
に採択されていなかったら、挑戦することすら考えなかったでしょう。
今後、私たちが展開している事業を通じて障がい者にとっての情報のバリアを解消、心のバリアフリーにつなげていきたいと思います。
落ち込んだ時のリフレッシュ方法
自分の気持ちが上がる食べ物や音楽のリストを作って、落ち込んだ時はリフレッシュするようにしています。子供のころから通っている大好きなお寿司屋さんのお寿司を食べたり、大好きなケーキを食べたりすると、自然と元気になりますね。好きな曲は何百回も聞くほどのお気に入りで、リラックス効果も抜群です。家に好きなお花を1本飾るだけでも気分転換になるので、自分の好みを把握しておくと良いと思います。
車椅子のひとたちがあきらめない世界をつくりたい
新しいことを始めると大変な場面にもたくさん遭遇しますが、その度に自分自身に問いかけているのは「自分のエゴなのか、それとも人のためになるのか」ということです。自分のためだけに頑張るには限界がありますが、他者のためにもなると思えると、辛いことがあったとしても「あの人の笑顔が見られたらよいな」と想像しながら懸命に取り組めます。来年の2020年は東京パラリンピックの年でもあるので、海外の車椅子ユーザーの方にも楽しんでもらえるように、必要な情報を発信していきたいです。
一般社団法人WheeLog 代表織田 友理子 氏
1980年生まれ。創価大学経済学部卒。2002年、22歳のとき進行性の筋疾患「遠位型ミオパチー」と診断を受ける。2010年から半年間にわたりデンマークに留学。2014年バリアフリー旅行情報を発信する動画サイト「車椅子ウォーカー」を開設。2017年にはみんなでつくるバリアフリーマップアプリ「WheeLog!」をリリースするなど、様々な活動に従事する。